Project (Japanese)

– Paper mechatronics –

 
シート状材料に各要素を印刷することで,ロボットを作製する研究を行っている.それは,ペーパーメカトロニクスともいうべき新しいモノづくりの形である.現在では,ロボット要素が印刷された紙基板が,自律的に折れ曲がることによって立体構造が形成される.印刷法の持つ簡便・迅速・省資源という特徴と,紙の持つ低コスト・軽量・フレキシブルといった特徴を合わせ持った,新しいロボットの構想を提案するものと考える.本研究の発展にあたって,期待される効果は以下のようなものが考えらえる.

・ロボットの構造と電子回路を「印刷法」という観点から統一的に俯瞰可能
・台頭著しいプリンテッドエレクトロニクスに対応する,プリンテッドメカニクスの提案と発展
・人間とロボットの共創社会を実現するための障害の一つと考えられていた,コスト面の改善
・2次元パターンと3次元機能の対応という新しい設計法と視座の提供

以下に,印刷ロボットを実現するために必要とされると考え,開発した要素技術を紹介する.

【 自動立体構造形成 】
自動構造形成
家庭用インクジェットプリンタから印刷された線に沿って,紙が自動で折れ曲がることによって立体構造が形成される.3Dプリンタと比較して,安価に軽量な構造物を作製可能な点が特徴として挙げられる.さらに,従来から研究されている,電子部品の二次元実装法(フォトリソグラフィ法,ピック&プレイス法など)を応用可能な点で,可用性は高いと考えられる.
関連論文:Origami Robot: A Self-Folding Paper Robot With an Electrothermal Actuator Created by Printing, IEEE/ASME Transactions on Mechatronics, 2016.

【 薄膜電気熱アクチュエータ 】
図5
家庭用インクジェットプリンタに投入可能な,薄膜アクチュエータを開発した.紙の上に導電性インクと熱膨張性インクを印刷することによって作製する.導電性インクから発せられるジュール熱によって,熱膨張性インクが膨張することでアクチュエータが変形する.電気熱アクチュエータは,薄いほど変位が大きくなる特徴を有するため,印刷ロボットとの親和性は高いと考えられる.
関連論文:Kirigami robot: Making paper robot using desktop cutting plotter and inkjet printer, IROS2015.

【 立体配線基板 】
figure1
自動立体構造形成する紙面上に事前に配線を印刷することによって,立体配線基板を構成することに成功した.配線用のインクは,構造形成するインクと同じプリンタから印刷されており,1つのインクジェットプリンタから簡便かつ安価に立体配線基板を作製できる.紙で作製された立
体配線基板は,低コスト・軽量・オンデマンドと言った特徴があり,自動立体構造形成を利用することによって任意の立体形状に沿って変形もできる.これらの特徴を有する立体配線基板は,個人認証・ヘルスケア・農業などの用途で活躍することが期待される.
関連論文:Printed Paper Robot Driven by Electrostatic Actuator, Robotics and Automation Letters, 2017.

【 伸縮基板への配線印刷と自動立体構造形成 】
Figure3b
高強度かつ環境適応性の高い折り紙ロボットの開発を目的として,誘電エラストマを基板として使用する研究も行っている.誘電エラストマは伸縮性が高く,アクチュエータ材としても用いられる材料である.刷毛を用いることによって誘電エラストマ上に均一に電極を塗布する技術を提案した.均一に塗布された電極によって駆動するアクチュエータは性能が向上し,単一の方向に塗布することで力学的・電気的特性に異方性が発現することを発見した.さらに,エラストマの両面にフレームを設置し伸縮方向を拘束することによって,任意の折り曲がり角度に自動的に構造形成する手法を開発した.
関連論文:Dielectric elastomer actuators with carbon nanotube electrodes painted with a soft brush, MDPI Actuators, 2018.

ここに述べられた手法は,直ぐに実用可能,とはいかないかもしれない.しかし,従来の減産的な切削工程とは異なる,印刷法を用いた加算的なロボット作製法を示唆している.また,個々の要素技術も,多岐に渡る分野で応用可能性があり,潜在性は高いと考えている.
研究紹介講演:2017年3月29日(水) 数理人「印刷法を用いたロボット作製法とその数理
研究紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=Zx-rHxiX-kw

– Control of soft robotic arm –


関連論文:Effect of base rotation on the controllability of a redundant soft robotic arm, RoboSoft2018.